2012年02月17日

第八回東京自由律俳句会 披講を終えて

【披講を終えて】        田中 耕司

 今回は百十四作品が寄せられました。その数が多いのか少ないのかはともかくとして、私は一つの区切りとして、百句を超えたのは第一段階を超えられたのではないかと思っております。
 その結果、「第八回東京自由律俳句会大賞」には二句が選ばれました。その得票は十七ポイントでした。
 十七ポイントが多いのか少ないのかも意見の分かれるところでしょうが、全体のレベルが高くなっているからであると思います。また、そうでなければいけないのだと思います。前置きが長くなりました。
 それでは、作品を見ていきます。先ずは大賞同点二句。

 満月 手をピストルにしてあなたを撃つ    南家歌也子

 南家作品は、六名の特選を得ています。それだけ強い印象を受けたのでしょう。満月の神秘性とからめての評が多かったようです。 この句の、一字明けについてもう少し時間をかけて意見を交換したかったのですが、それほど問題となるような使い方ではないというのが大勢だったようです。
 「手をピストルにする」という作品は過去にあるので手を出したくなかったとの指摘がありました。すべての作品を知るのは不可能ですし、同じ様な言葉の並びの句があっても発想が違えば問題はないと思います。
 それよりもちょっぴり男と女の愛憎があって、しかもそれをユーモアをもって深刻にしていないところに魅力があり、満月にはこのような魔力もあることを皆さん感じたのが高得点の原因だと思います。

 一人を独りと書いてしまいそうな月夜     渥美ゆかり

 渥美作品の特選は三名でした。同じポイントですから、賛成者の数ではこちらのほうが多いという結果でした。
 「絶対に残したい日本の文化」と言う特選の評がありましたが、非常にうまい使い方であると感じましたし、そこが賛成者の多くに共通した受け取り方だったのではないかと思います。女性らしい作品だなと思っていましたが、別に女性でなくても通じる作品だと思うようになりました。それが何に起因するのかは分かりませんが、正直な句作がそうさせるのだと思います。
 秋らしく、月を題材としていながら全く違う表現で一句を構成している。南家作品の、「一字空け」、渥美作品の「一人を独り」、この二句には、音で聞いたのでは理解できない、活字や描いたものを見なければ理解できないという共通の弱点があります。この弱点を克服するために現在の我々には、不断の努力が求められています。ここに自由律俳句の大きな可能性があるのだと確信をしました。

 第三位には、十四ポイントで

 足裏の砂逃げていくひとりぽっちの汀     吉田 數江

 吉田作品の特選は、三名でした。特選に選ぶのは人によって基準が違うのでしょうが、共通しているのは作品との一体感を持てるかどうかだと思います。その意味で、この作品がもっている感覚は、多くの人に共感をもって迎えられる作品なのだと思います。そのために作者は、渚と書かずに汀と書いている。この一字の選択が一句を成功へと導いたのだと思います。個人的な話で恐縮ですが、少年時代、私もこの作品と同じ状況の一句を作った覚えがあります。その時、この状況を上手く一句にできたら免許皆伝にしてあげると言われました。このようにかなり普遍的な題材なのかもしれませんが、だからこそ多くの賛成を得たのだと言えるのではないでしょうか。

第四位には、十一ポイントで

 煮凝り中までゆれてる淋しさかよ       藤田 踏青

 藤田作品の特選は、一名でした。特選が一名で、ポイントが多いのは賛成者が多いのですから、作者の想いが多くの人に伝わったのだと言えます。食べ物の煮凝りを思うよりも、そこからの発想で今回の震災を思い浮かべた人たちが多かったように感じました。あのプリン体の頼りなさが、震災による液状化を思わせたのかもしれません。この作品の結句「かよ」についても色々な意見があったと思うのですが時間的余裕がありませんでした。ここを話し合うべきなのにという思いです。

 第五位には、十ポイントで

 こんこんとねむるまぶたは白い貝のふた     吉原 陽子

 吉原作品は、二名の特選を得ています。この作品の解釈は二つに分かれていました。小さな子供が遊び疲れたのかぐっすり寝てしまっているという、普遍的な人間愛を感じた人と「こんこんと」の言葉から重い病の床にある友人や、家族を思った人にです。どちらが正しいとかは問題ではなく、この作品にある、人を思う心が読む側に伝わったのだと思います。私は、貝のふたから固く閉じられたと感じたのですが、友人の死までは読み取れませんでした。
今回、高得点の作者が参加できない人ばかりでしたので、自解を送ってもらっていて作者の気持ちが解ったのですが、やはり直接お話を聞きたいという思いは、参加者の皆に共通していたのではないかと感じました。そして、「一句を作るのは上手くなったが、読み方がちっともうまくならない。」と言われた師の言葉にほんの少しは答えられたのだろうかと、振り返っています。この会を、続けていくうちにきっと一位の作品にある弱点を克服する次の世代が出てくるのだと、大きな希望を持てました。参加された皆さんには、十分な満足をしてもらえなかったのだろうとは思いますが、私は、十分に満足できた句会だったと感じています。

 その他上位句
   今年最後の朝顔はやさしい色でした    田中 耕司
   あれこれ引き算してます老いの一里塚   若山志津子
   神様ミリシーベルトが重いんです     中塚 唯人
   原発をいうわたしの言葉がたりない    平岡久美子
   抱く子の耳唇にはさむ母も幼い      吉多 紀彦
   妻外泊の日の雨戸を閉める        吉多 紀彦


posted by 東京自由律俳句会 at 18:57| Comment(0) | 第8回 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。